花を追い34

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 冗談、だよな? 
 汗までにじみ出てきそうだ。
 ややあってやっと良太は口の中のものを咀嚼して飲み込んだ。
「そ、そりゃ、振られたばかりとかじゃなくても、誰だってそんなこと思うわけないじゃないですか。って、振られたんですか?」
「振られるだろ、やっぱ世代の違いってか、俺の場合は、話についていけなかったから、無理だったんだろ」
 やっとフォーカスを外した感じで、宇都宮がワインを飲み干す。
「やっぱ、傷つきますよね、そういうのって」
「うーん、まあ、多少は。でもやっぱりってのがあったしな」
「尾花沢さんからのアプローチでしょ? 彼女、可愛いし誰とでも打ち解ける風なかんじだし」
「そう、何となく、ごはん行こうかみたいな……あれ、良太ちゃん、詳しいね、彼女のこと」
 宇都宮が笑いながら良太を見た。
「前に、奈々ちゃんの出てるドラマで、ちょっと一緒に会ったことがあって。ただ、あとになって、奈々ちゃんが何気に、彼女ってふわっとしてて誰でも好感持てるタイプだけど、少し話すようになると、自分の好きなテリトリー内じゃないと話せないみたいって」
 良太は口にしてしまってから、「あ、すみません、勝手なこと」と慌てた。
「いや、そうなんだ。実は、そんな感じでだんだん話がなくなっちゃって、俺は世代の違いってか、俺も随分オヤジになったもんだと思ったんだが」
 宇都宮はワインをグラスに注ぎきって、皿の肉を口に運ぶ。
 そんな宇都宮を見ながら、ひどくきれいな所作だなと、良太は思う。
「彼女の場合、テリトリーを抜け出すことを考えないと、この先、彼女風な仕事しか来なくなるかも知れませんね」
 すると宇都宮がさっきとは違う表情で良太を見つめた。
「なるほど、しがない俳優なんかやってるより確かなポジションなんだな」
「え?」


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