花を追い40

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 朝から気温が高めで、太陽が人とはなくビルとはなく惜しげもなく降り注いで、窓から見やる外のようすは何やらもう夏めいていた。
 良太はプラグインの藤堂、クリエイターの佐々木に伴い、朝イチでスポーツウエアのCF制作の打ち合わせに出向くことになっていた。
 大手アパレルメーカー株式会社ONOのスポーツウェアブランド『アディノ』が今回プラグインのクライアントであるが、もともとは関西タイガースの看板スラッガー沢村智弘にもたらされたCM出演依頼だった。
 メディア嫌いで知られる沢村に何度も話を持ち掛けてきたアディノの広報課長小菅に対して、プラグインが制作するなら受けると、既に広告代理店英報堂が請け負うことに決まりかけていたところへ無理難題を言い放って、当人は最初話を蹴ったつもりだったらしい。
 ところがその小菅課長がかなりの野球ファンでなおかつ関西人でもあり、かなりの関西タイガースファンで、さらにかなりな沢村ファンだということで、沢村の無理難題を受けてしまったのである。
 ただし、英報堂とコンペということになったのだが、これがなんとプラグインに決まってしまったと、藤堂から良太に連絡が入ったのはつい先日のことだった。
 ただでさえ工藤にあれやこれや押し付けられた上に、なんだかだと色々な厄介ごとが次々とわいては消え、の状態の良太にとって、その知らせはため息の一つも吐きたいくらいだった。
 何せ沢村の無理難題は無論ペナントレース真っ最中であるから、制作側がトレーニングしている沢村のところに出向くわけで、しかも、である、代理人を良太に押し付けてきたのだ。
 というわけで、今回良太は沢村の代理人という立場だが、そこは気心の知れたキレモノの二人との仕事なのでまだ安心感があった。
「沢村選手がただ今遠征予定でお目にかかれないのは承知いたしておりますが、ぜひぜひいずれご本人にお目にかかりたいです!」
 少なくともそう三回は熱く口にした小菅からは、期待感がにじみ出ていた。
 ただし、佐々木が関西なまりなのが好印象だったのはいいのだが、「いやあ、それにしても男性でもおきれいな方がいらっしゃるもんですねぇ」と臆面もなく無遠慮に佐々木に秋波を飛ばしていた。


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