花を追い42

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「天才クリエイター、アイディアが降臨ってとこですか? 佐々木さん」
「そんな大それたもんやないですけどねぇ、忘れないうちに描きとめとこ思て」
 集中している佐々木は表情がすごくいいな、と良太は改めて思う。
 まあ、さっきの小菅さんじゃないけど、この人を射止めるって、やっぱすごいことなのかも。
 才色兼備を絵に描いたような存在だよな。
 つなぎとめたくて必死になる沢村の気持ちもわからないではない。
 そんなことを良太がぼんやり考えていると、まもなく三人分の海鮮丼ランチが運ばれた。
 老舗なのに、エビ、いくら、ウニ、マグロ、ホタテと新鮮なネタがこれでもかと乗っかり、文句ない美味さの上、茶わん蒸しに卵焼きがついているが、この味がまた絶品だった。
「美味いわ、これ。茶わん蒸しもいけますね」
 佐々木も美味いものの前にはさっさとスケッチブックを置いて箸をすすめている。
「でしょう? ここ来て正解だった」
 藤堂も自慢げに頷いた。
「ほんと、美味いです!」
 良太はほとんど言葉もなく海鮮丼を平らげていく。
「今度、直ちゃん連れてこよ。このくらいのボリュームでもあの子ペロリやから、美味いもんやったら」
 佐々木は直子を思い浮かべて苦笑する。
「そういえば、最近会ってないな、直ちゃん」
「相変わらず、世話になってますわ、直ちゃんいなんだら、俺、やっていかれへんし」
 軽くのたまう佐々木にとって、仕事上確かに可愛いがしっかり者の直子はなくてはならない存在である。
 前の奥さんもふんわりパステルの絵のような可愛らしい人だったと、当の直子から聞いている良太は、おそらく佐々木が沢村と出会いさえしなければ、ひょっとしたらごく自然に佐々木と気難しい佐々木の母親ともうまくやっていけそうな直子と将来的にカップルになっていたのかもしれないと思う。
 だが本当に出会いなど不思議なものだ。
 よもやあの沢村と佐々木が、だ。
 まあ、出会いといえば、自分と工藤との関係も妙なものだといえるのだが。
 もし、父親が知人の保証人などにならなければ大きな負債を抱えることにもならなかったし、引いてはその負債のために良太が少しでも実入りのいい仕事をと考えて、青山プロダクションの面接などに出向かなかったかもしれない。


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