花を追い46

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「何かいいことがあった?」
 座敷に戻るとさっそく藤堂が聞いた。
「え、あ、いえ、別に」
 そんなに顔に出ていたのだろうか、と良太は表情を引き締めた。
「そうだ、打ち上げには飲みに行きましょうよ、いい店を見つけたんです」
 帰りの車の中で藤堂が言った。
「まだ仕事始まってもないですよ?」
 良太は呆れてハンドルを握る藤堂を見た。
「楽しいことは早めに計画しておかなくちゃね」
 相変わらずお茶目なことを口にする藤堂だが、洞察力の鋭さは良太もよく知っている。
 さっきも工藤に会えるのを喜んでいることを見透かされたに違いない。
 藤堂さんって、やっぱあなどれないよな。
 会社の前で降ろしてもらい、ちょっと手を振って去っていく濃紺の車をしばし見送りながら、良太は改めて思った。
 午後は三時からスポンサーの一つである保険会社Sホールディングスの広報課長と打ち合わせが入っているが、戻ってくれば外出の予定はないので、明日の坂口ドラマの打ち合わせに備えて資料に目を通しておこうと思いながら、オフィスのドアを開けた。


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