花を追い48

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「えっと、広瀬さんですよね? 急にすみません、俺、カンパネッラの吉川です」
 カンパネッラは軽井沢に行くと時間があれば一度は訪れるイタリアンレストランで、吉川はそこのオーナーシェフだ。
 平造とは気が合うようで、たまに吉川も工藤の別荘に立ち寄って、二人で料理の話などをしていることがある。
 しかしどうして平造の携帯で吉川が連絡をしてきたのだろう。
「あの、平造さん、何かあったんですか?」
 良太の中で不安が募る。
「いや、それが実はちょうど通りかかった時、平さん薪割りしてたんだけど、いきなりぎっくり腰で倒れちゃって」
「え?! ぎっくり腰? それで平造さんは?」
「ちょっと動けない感じで入院ってことになっちゃったんで、平さん、連絡しないでいいって言ったんだけど、一応」
 よもや何か病気で倒れたりしたのではと思った良太だが、ぎっくり腰と聞いて少し胸を撫でおろした。
「お忙しいところありがとうございました。これから俺、向かいますから」
「あ、じゃあ、今日定休日なんで、こっちに来られるまで、俺、ついてます。別荘の方は、ちゃんと戸締りしときましたから」
「すみません、何から何まで、よろしくお願いします」
 電話を切ると、良太はしばし、どうしよう、と頭を巡らせた。
「ってか、平造さんとこには俺が行くしかないだろ。まず、鈴木さんに電話して、猫のこと頼まないと。ってか、どうしよう、工藤!」
 代わりに誰か行ってもらうとかも考えたものの、一人として成田に行けるような者はいないようだ。
「仕方ない、五時過ぎに工藤に電話してタクシーできてもらうっきゃないな」
 あ〜あ、というのが良太の本音である。
 とことん工藤と会えない状況が続くらしい。
 といって、平造を放っておくわけにはいかない。
 鈴木さんに事情を話し、平造の心配をする鈴木さんに猫のことを頼むと、良太は首都高へと車を走らせた。


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