花を追い53

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 疲れて帰ってきて迎えが来ていないとか、申し訳ない気持ちがないはずはない。
 だけど、仕方ないじゃん。
 ひとまず心配しているだろう鈴木さんに電話を入れ、会社の状況を確認した良太は、カレンダーの日付にふうっと一つため息をつく。
「ひえ、もうGWすぐじゃん。うかうかしてらんないねっと」
一人ごちて良太はエンジンをかけた。
 すっかり暗くなった道を別荘の門まで車を走らせると、センサーで灯りがついた。
 と同時に車のナンバーを認識して門が開く。
 ゆっくりと車を進めた良太はあれ、と思う。
「俺、灯り消すの忘れてったっけ」
 庭園灯だけでなく、玄関やリビングの灯りもついているようだ。
 車を降りて、玄関を開けようとした良太は、「うわ、鍵かけるのも忘れた?!」と慌ててドアを開けた。
 ところがリビングに行くと、暖炉が燃えている。
 建物が古いし、冬は底冷えがするためエアコンだけではこの時期まだ朝晩は寒いのではあるが。
「あれ? 何で? 誰が? 泥棒???!!!」
 良太は恐る恐る中へと足を踏み入れた。
 途端、ぬっと黒い影が現れた。
「うわっ!!!!」
 思わず後ずさった良太は後ろにひっくり返りそうになって慌てて間近の柱を掴む。
「何やってるんだ、お前は」
 聞きなれた声が降ってきて、「…へ??」と良太は顔を上げた。
 何しろ古い造りだから、リビングの古いシャンデリアは薄暗く、フロアスタンドを引き寄せないと夜でなくても本など読めない。
 そんなだから大きな男に灯を背にして立たれたら誰だかわからなかった。
「泥棒がわざわざ灯をつけたり火を燃やしたりするか」
「何だよ、ひとことこっちに来るって言ってくれれば………」
「面倒だから羽田から直接来た」
 工藤は持っていた携帯をテーブルに置くと、コートを脱いで暖炉の薪を火かき棒でつつく。


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