花を追い54

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 エアコンだけではなかなか部屋は温まらないので、寒い時は必然的に暖炉の近くに行くしかない。
「へ? タクシーで?」
「平造が心配なら来いって言ったのはお前だろう」
「平さん、二、三日入院した方がいいって」
 ちぇ、何だよ、俺のせいにしないで素直に言えばいいじゃん、平さんが心配だったって。
「二、三日といわずしばらく大人しくしていればいいんだ。明日から杉田に来てもらう」
「あ、もう連絡したんですか」
「ああ。どうせ何も食ってないんだろう、寿司の出前を頼んでおいた。俺は風呂に入ってくるから払っといてくれ。先に食ってろ」
 工藤はポケットから札入れを出し、テーブルに置くと階段を上がって行った。
「はい、わかりました」
 良太は二階へ上がって行く工藤の後ろ姿をぼんやり見つめた。
「なんか、うらぶれてるって感じ………そっちこそしばらく休んだ方がいいって」
 暖炉のそばのテーブルにお茶や皿を用意しているうちに、やがて寿司屋がきたらしく、門のチャイムが鳴った。
 リモコンで門扉の横のドアを開けると、玄関でまたチャイムが鳴った。
 寿司は三人前はありそうだ。
「こんなに誰が食うんだよ」
 ちょっとしたあまのじゃくから文句の一つも口にしてみるが、寿司を前にしたら途端に腹が減ってきた。
「ビール、ビールっと。工藤、熱燗のがいいかな」
 良太は冷蔵庫から自分の分のビールを出してきたが、せっかく工藤が帰ってきたというのに、先に一人で食べる気にはならなかった。
「工藤と食事とか、すんげ、久しぶりって気がする」
 テーブルに頬杖をついた良太はそんなことを考えて少しほっこりした。


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