花を追い55

back  next  top  Novels


「おい、良太」
 揺さぶられて良太ははっと顔を上げた。
 どうやら知らないうちに居眠りしてしまったらしい。
「まだ食ってなかったのか」
 ガウンを着た工藤は缶ビールを二本ほど持ってきて、二つのグラスに開けると、一つを良太の前に置いた。
「疲れてたんですよ、高速飛ばしてきたから」
 つい、憎まれ口を聞いてしまう。
「いただきます!」
 食べ始めるともう止まらないくらい、良太はもくもくと健啖ぶりを発揮した。
「制作発表の時なんか急に竹野紗英がなんで工藤さんがいないんだっていちゃもんつけてくるし、もう先が思いやられますよ。奈々ちゃんがドラマのオーディション受かったのはよかったけど」
 アルコールが少し入ると、良太は工藤の留守中のことを端から話した。
 SNSでその騒ぎが拡散されて、工藤と竹野がどうとか根も葉もない噂が一時あがっていたことはうっかり言ったりしなかったが。
「そういえば、宇都宮さんて、大物俳優のくせにざっくばらんで面白い人ですよね」
「宇都宮?」
 それまでちょっと鼻で笑うくらいの反応だった工藤がグラスをテーブルに置いた。
「制作発表の後、何か相談があるとかって言われて、ご飯奢ってくれたんですよ」
「それで?」
「それが、結局、何か俺の仕事の話とか例のドラマの脚本家が逃げちゃった話とかで終わっちゃったんですけどね」
「ほう?」
「帰り送っていく時、宇都宮さん勝手にナビに電話番号とか入れるから焦りましたよ。あんな人気俳優の家とか、俺、責任重大じゃないですか。ただでさえ、週刊誌とかによく追われてる人だし」


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ