花を追い58

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 子供の頃から武道を嗜んでいて、大学ではボクシングもやっていたという工藤だが。
「それってあまり関係ないよな、むしろそーゆー要素がもともとあったっつうか」
「何がそーゆー要素だ?」
 ちょうど良太がバスローブで腕組みをしてぶつくさ言っている時にドアが開いた。
「え、いえーー、こっちの話で………あ、あれ……」
 ふと窓の方に顔を向けた良太は、カーテンの隙間から垣間見えたものに気づいて、窓に寄って行った。
「うわ、これすご、工藤さん!」
「何がどうしたんだ?」
 良太は思い切ってカーテンを開けた。
 幽玄というにふさわしい情景がそこにはあった。
 桜の大木が夜を背景に庭園灯に照らし出され、いくつかの花びらが音もなく舞い落ちる。
 しばらく魅入られたように窓に張り付いていた良太の後ろに、いつの間にか工藤が立っていた。
 程なく、ひとふきの風に一斉に花びらが躍った。
 言葉が出てこない。
 息をのんで立ちすくんでいた良太は、工藤のキスに絡めとられ、すぐに深く口腔を嬲られる。
 工藤は窓側のベッドに良太を軽く倒すと既にはだけかけたバスローブの中へと指を這わせた。
 身体が勝手に工藤を悦んでいるのだと応えてしまう。
 でなくても工藤と会えて嬉しい良太の心のうちなどわかっているに違いない。

 このぬくもりが欲しかったのだ。
 工藤のぬくもりでなくてはダメなのだ。

 最初から深く繋がった工藤に、熱を持った吐息が良太の唇から漏れる。
 脳髄までも甘い痺れが良太を支配する。
 高見へと追い上げられ、堕とされる。
 見入っていたせいだろうか、乱舞する花びらの中に埋もれてしまうような錯覚を覚え、やがて良太は意識を手放した。


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