花を追い60

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「別に何も言ってないだろ」
 工藤はフンと鼻で笑う。
「俺、そろそろ藤堂さんと打ち合わせですから、失礼します!」
「藤堂と? こっちに来てるのか?」
「WEB会議です」
「ほう?」
 またちょっと小ばかにしたような工藤の反応を無視して、良太はリビングへと移動し、自分のタブレットを立ち上げた。
「おはよう、良太ちゃん。今日も元気な顔を見られてうれしいよ」
 今日もテンションの高い藤堂の声が良太を出迎えた。
「やっぱり早出の練習の時を見計らってということかな」
「全体練習の二時間くらい前に集中して特打とかやるんです、沢村。ホームゲームの時がいいのではと思います」
 撮影の日程を沢村に打診して、決定しなくてはならないのだが、ペナントレース中はマスコミ取材なんか絶対受けないと言われた沢村が、その信念を返上してまでこの仕事を受けたのは、やはり佐々木に会いたいだけ、なんだろうとは良太にはわかる。
 いや、あいつ、佐々木さんのためなら野球なんか辞めるとか、言ってたこともあったしな。
「しかし、沢村選手がよく受けてくれたよね、この仕事。昔、一度CMに出たのは球団側命令だったかららしいし」
 藤堂も同じようなことを考えているに違いない。
 そういえば、以前CMではないが大和屋の着物ショーに出たのだって、佐々木が関わっていたからだ。
「まあ、受けたからにはきっちりやるでしょう。近日中に沢村に日程のこと聞いておきます」
「よろしくね。あ、そうだ、打ち上げの店、決めたから……」
 と藤堂が言ったところで、良太の背後から「何の打ち上げだ?」という怒気を帯びた声がした。
「あ、工藤さん、いらっしゃったんですか。それじゃ、よろしくね、良太ちゃん」
 藤堂は良太の背後の工藤を認めると、早々に切ってしまった。
「藤堂さん気が早いだけですよ、沢村の仕事が済んだらって話です」
 藤堂の代わりに良太が弁明する。
「まだ始まってもいないのにバカか」


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