花を追い61

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 あーあ、実はキレモノの藤堂さんをバカ呼ばわりするなんて、工藤だけだよな〜
 今頃くしゃみでもしていそうな藤堂が少し気の毒になる。
 工藤は一つ二つ電話をしたくらいで、その日は近くの店でランチを取り、午後から平造を見舞った。
 夜は礼もかねて吉川の店に行ったあと、工藤が軽井沢にくるとたまに寄るバーのカウンターでまったりと好きなラム酒を手に、良太が話し忘れていた、奈々のオーディション会場で、オーディションを受けに来た若い連中と間違えられたことを話すと、これもまた珍しく工藤が笑った。
 結局、工藤の権限? でその日も軽井沢で過ごすことになったため、ほんとに平造には申し訳ないと思いつつ、嬉しい良太だった。
 そういえば、と良太は思い当たる。
 工藤って、あの桜、ほんっとに久し振りに見たんじゃないのか?
 工藤にとって桜はもう何年も忌むべきものだったらしい。
 でも、もう、いいのかな。
 これもやっぱ、平さんのお蔭、だよな。

 
 空には満月がぽっかり浮かんでいた。
 桜は月の光を浴びて、優雅にその年最後の花を散らしていた。


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