恋人同士なんていえないくらいなとこだし、俺と工藤って。
「ってか、その沢村だ」
さっきから頭の中でぐるぐるしているのは、沢村の問題発言のことだ。
「佐々木さんっていったって、そんな名前どこにでもあるしな」
だが、最近沢村の周りにいる佐々木といえば、あの、ジャスト・エージェンシーの佐々木周平しか思いあたらない。
佐々木のオフィスを教えろと言ってきたり、イブのパーティのことだってそうだ、いきなり行きたいなんて電話してきて、駄々こねみたいに………、佐々木さんがいることを知ってたから? 十月の終わりって時期もどんぴしゃだし。
沢村がクールとか言われていても、本気になったら結構熱いやつなのはよく知っている。
「まさか、いくら美人でも女と間違えてるなんてことは………ないよな。何度か会って、向こうも沢村のことを好きだと思ってたって……」
佐々木は確かに時々ドキッとするほどセクシーだったりするが、でも口を開けば結構男っぽいし。
「そういえば佐々木さん、着物ショーの件で佐々木に電話をした時、沢村の話をしてて、決まり、なら仕方がない、とか何とか言ってたのって、やっぱ沢村と何かあったからだったんだ」
今思えば、何か含みがあるような雰囲気だった。
それもそのはずだ、年明けのイベントには二人とも顔を合わせることになるのだ。
そうか、だからか。
「てっきり、あの人、直ちゃんとほんわかカップルだとか思ってたのに………それが沢村とつき合ってて、あいつの正体を知ったら突然終わりだって………?」
良太はふと、そのわけがわかるような気がした。
沢村でなければ、良太もここまで心配しないかもしれない。
「だって、三冠王が男となんて、ヤバいって思うだろう、普通」