限りなく傲慢なキス 5

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 工藤はドラマの顔合わせでも芽久が自分にベタベタつきまとうのを、スポンサーのお気に入りという手前、無闇に邪険にもできず、良太の機嫌をこれ以上損ねられてはたまらないとばかり、忙しさを理由にドラマの方を良太に押し付け、自分はとっとと日本を逃げ出したわけである。
 自分はやりたいだけやって、俺を起こしもしないで、出かけるし。
 ちぇっ、どうせ俺なんか、工藤にとっちゃその程度の存在なんだろ!
 思い出すと顔が熱くなってしまうのを慌てて振り払うが、ぐちぐちも言いたくなるというものだ。
 お陰で良太は、ドラマの打ち合わせでは芽久から、「工藤さん、いつ帰るの?」と何度も詰め寄られるはめになり、その上、始めからそりが合わなかった監督と脚本家の間でしょっちゅう揉め事が発生するため、双方の言い分を聞いてその場を収めるのに無駄に時間を費やし、考えるだけでも疲労困憊の状態だ。
「ったく、それは俺が聞きたいよ! あの、エロオヤジ!」
 はあ、と大きく溜息をつく良太の前に、温かいコーヒーが置かれた。
「随分お疲れのようね、良太ちゃん。ワーカホリックなところまで工藤さんを見習わないでね」
「ハハ、ありがとうございます。肝に銘じます」
 鈴木さんの優しい微笑に空笑いを返して、良太はまた一つ溜息をついた。


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