花びらながれ28

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 リテイクの原因は、主にワイマラナーのトムのご機嫌が悪かったせいで、おそらく張りつめた空気がトムに伝わってしまったのだろう。
 小笠原は犬が好きなようでゆったりと笑っているし、古木は佐々木とは顔見知りのようで笑顔で和んでいる。
 困っているのは犬の管理している会社のトレーナーのようで、しきりにトムのご機嫌を取っているが、動物を使う撮影は非常に難しいことは周りもわかっているはずだ。
 美しいワイマラナーだ。
 メタリックなダークブルーの車体によく合っている。
 そんなことを考えながらじっと、トムを見つめていた良太は、トムと目が合った。
 良太は何となく目をそらし、小笠原の方へ行こうとしたその時、冷たい鼻が手に当たった。
「え?」
 思わず横を見ると、トムが良太の横にぴたっと身体を寄せて立っている。
「よう……まあ、緊張するよな、みんなピリピリしてるから」
 かがんで首の辺りをさすってやると、トムは素直に身体を預けてくる。
「すみません」
 トレーナーの青年が慌てて後を追ってきた。
「この子、結構気難し屋で……でも、犬、お好きなんですね、トムはあまり人に懐かないんですけど」
「え?…そうですか?」
 苦笑いをする良太は、確かに昔から知らない犬に懐かれることがよく合ったのを思い出した。

 


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