花びらながれ44

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「え、何? そんなツボにはまった? 直ちゃん」
「だってぇ、やっぱ、佐々木ちゃんて、アマテラスオオミカミ~」
 まだ笑いが止まらない直子に良太が戸惑っているうちに、沢村がやってきて佐々木にグラスを渡す。
 それを受け取った佐々木を見て、良太はちょっと胸を撫で下ろした。
 賑やかな夜宴はちょうど日が変わる頃にお開きになったが、折角きれいだからと、井上が朝までライトアップをそのままにしていったお蔭で、工藤の部屋からも桜を見おろすことができた。
 風に舞い上げられた花びらはともすると七階のベランダまで飛んできている。
 工藤は闇の中に浮かび上がる桜の木を見おろした。
 ちゆきのことを思い出さないわけはないのだが、こうして何とか眺められるようになったのは花の呪縛からは既に解き放たれたからだろう。
 おそらく、軽井沢のあの花も見ることができる気がする。
 ひとみの言う通り、後ろ向きでセンチメンタルな男だからな、俺は。
 工藤は苦笑した。
 その俺を前に向かせたのは、一見するとまだまだガキみたいなヤツだなんてな。
 工藤はベッドであどけない寝顔を見せている良太を思い、嗤った。
「……工藤?」
 窓から外の明かりが入ってきているのだろうかと、夜中に目を覚ました良太は窓辺に立つ男の影に気づいた。
 肩を起こして顔を上げると、工藤が振り返った。

 


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