花びらながれ8

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 一つの疑惑が良太の心に芽生える。
「まあ、座って座って」
 水野は良太をソファに促すと、奥のキッチンへ引っ込んで、やがてコーヒーが入ったマグカップを二つ持って出てきた。
「コーヒーでいいよね?」
「あ、はい、どうぞ、お構いなく」
 何と人気ミュージシャン手ずから入れてくれたコーヒーの前で良太は恐縮した。
「ごめんねぇ、この事務所、年明けに立ち上げたばっかで、まだ事務の子も決まってなくてさ。前の事務所からは円満に独立したんだけど、新しい会社作るのって大変だよね、色々やんなきゃならないことばっかで。経理とかは知り合いの会計士にお願いしてるんだけど、マネージャーとかも探さなきゃなんないし、ひとみにも色々相談に乗ってもらったり」
「え、今、じゃ、お一人で色々やられてるんですか? 他のメンバーの方は?」
 確かドラゴンテイルは四人組のはずだ。
「ああ、今、オフだから。私ら結成当時から、マイペースで自分の音楽をやっていこうってのがモットーで、一年の半分はツアー、半分は曲作りってことになってんの」
 そう言いつつ水野はテーブルにあった煙草の箱から一本取り出そうとして、「ああ、いけないいけない」とまたそれを戻す。
「禁煙中だった。何か高広も、本数減らしてるんだって? それも良太ちゃんの進言なんでしょ? あの高広ができるんだったら、私もやるって思ってさ」
「絶対ダメだとはいいませんけど、本数は減らした方がいいと思いますよ」
 高広……って、やっぱりね……
 良太は疑惑が形になっていくのを感じたが、それより仕事、と切り出した。

 


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