清風 12

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 番町あたりの一角に広大な敷地を占め、東洋グループ会長綾小路大長の屋敷があった。ぐるりと高い塀が延々と囲み、外からは中の様子を窺い知ることは勿論できない。
 正門の前で車を停め、工藤はドアフォンで来訪を告げた。
 工藤が運転席に戻ると同時に門がスーッと中に向かって開く。玄関に続く道の両側には、どちらかというと日本庭園というよりは、うっそうとした林のように庭が広がっている。
 車はゆっくりと邸宅の玄関前に進む。
「お待ちいたしておりました、工藤様」
「あけましておめでとうございます。お邪魔いたします、藤原さん」
 工藤と良太が車を降りると、老齢の男が髪の薄い頭を下げた。
 あれって、執事っての? おもしれぇ、今時いるんだ。
 手土産にした高級ブランデーや千疋屋で良太が買わされた自分で買って食することが生きているうちにあるだろうかというような高級メロンや巨峰などの入った包みを工藤が藤原に渡しているうち、良太は珍しそうにそっとあたりを見回してみる。
 後ろから出てきた若い男が、「あけましておめでとうございます、工藤さん」と親しげに声をかけた。
「おめでとうございます、日本に帰ってたのか?」
「ええ、たまには帰んないと。そちらは和泉くんでしたよね? 姉がファンなんですよ、あなたの。綾小路涼です、よろしく」
「いえ、広瀬良太と申します。工藤の秘書です。あけましておめでとうございます」


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