清風 16

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 奥の方から京助がまた茶々を入れる。
「京助なんかに聞いてないわよ!」
「まあ、これで皆様お揃いだわね。そろそろお座敷にご案内してくださる? 京助さん」
 二人のやり取りを遮って小夜子が言った。
 奥のリビングにいたのは何と、デザイナーのアルトゥール・マルローだった。
 いつぞや、彼のコレクションに出演するアスカとともに、忙しい工藤の代理で良太がパリに出向いたことがあった。何とか覚えたフランス語を駆使し、打ち合わせや段取りにと必死に飛び回った良太をマルローは案外評価してくれたのだ。
 マルローと親しげに話している千雪も良太に気づくと、すぐおめでとうと声をかけてきた。挨拶を返しつつもついつい不躾に千雪を見つめてしまう。
 黒のスーツに生成りのシャツを合せているが、その秀麗な美貌には着物美人もかなわないとさえ思わせる。ましてやどんなにかっこづけしたところで、自分ごときには到底及びもつかない。
 ちぇ、と良太はちょっといじける。
 マルローはプロモーションのために日本に滞在中という。良太に気づくと、「Oh、Ryota」とばかり、オーバーアクションで懐かしげに良太を抱きしめ、アスカには『Tre Bien』を連発してえらくご機嫌だ。


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