清風 19

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 涼の発言で、良太に視線が一斉に注がれる。
「いや、俺、プロデュースの仕事をさせてもらいたいと思っているんです。あれはあれで勉強になりましたけど」
「今時、これしかない、なんて流行らないわよ。堅苦しく考えないで、たまにやればいいのよ」
 アスカが言うのもわかるのだが。
「そうよ、ユキだってさ、どうせ見ている人には小林千雪だなんてわかんないんだから、映画とか出てみればって、言ってるのに」
「何で俺に振るんや、俺なんかできるわけないやろ」
 いきなり話が別の方向に飛んでいる。
「だって、あの工藤さん直々に、やってみないか、なんて言わせる人なんて後にも先にも、ユキくらいよ」
 うわ~、アスカさん、それ、俺の前で言うなよ~
 心の中で良太は懇願する。
「こいつに演技なんか、できるわけないだろうが」
 京助が断言する。
「でも、ちぃ兄ぃなら、演技しなくても、そのままで絵になりそうだよね~」
 大の言葉が、良太の心にまたビシビシ響く。
 そうか、やっぱね~。
 千雪さんを誘ったとは聞いていたけど、そうだよな~、俺には、今の京助の言葉そのまま言ったくせに、千雪さんには、やってみないか、か。鬼の工藤がそこまで思いいれてたわけだ。やっぱ。
「足、きつい? 崩してもいいよ」
 急にうつむき加減に焼き物を箸でつついていた良太を涼が気遣う。
「は、いや、大丈夫…」
 良太はやせ我慢でそう答えたが、膳が終わる頃になると、正座がかなりきつくなってきていた。


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