清風 2

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 電話の内容は、その小夜子から、週末に自宅で行われるという初釜に、工藤と一緒に招待したいというのである。
 東洋グループはこの『青山プロダクション』にとっても大事なスポンサーだ。工藤は何をおいても駆けつけざるを得ないところだろう。
「だって、海外の大事なお客様が主賓のお茶会なんでしょ? 工藤さんはわかるけど、俺なんか、何で……」
 高校の文化祭で、菓子につられて茶道部の女の子に無理やり抹茶を飲まされたことはあるのだが、メチャ苦かった上に、畳の上に長いこと座らされて足がしびれた、カッコ悪い思い出しかない。
 できれば遠慮というより勘弁してもらいたいところだ。
「ああ、テレビドラマをたまたま見て、千雪に自分の教え子だと聞かされたからだと」
 そんな皮肉っぽい言い方しなくてもいいじゃん。どうせ、ドヘタな演技だってくらいわかってるさ。
 苦々しげに煙草をくわえる工藤を、良太はちょっと睨みつける。
 乃木坂に瀟洒な自社ビルを構える青山プロダクション。数名のタレントを抱える芸能プロダクションである。
 社長の工藤高広はこれまでにも、テレビ、映画などにおいて数々の作品に手腕を発揮している業界では知らないものがない敏腕プロデューサーだ。
 その工藤の秘書兼雑用係兼運転手兼ちょこっとプロデュースの仕事もかじってみました、というのが広瀬良太である。
 最近では、その上CMやドラマにも出演しちゃいましたとなれば、もうこれは何でも屋というしかないだろう。
 しかも、工藤と良太が恋人関係だというのは、社内及び近しい人間の間では暗黙の了解というところだ。


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