清風 20

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 マルローはついに足を崩していたが、他の面々がきちんと正座しているのに、自分だけ崩すわけにはいかない。千雪など、涼しい顔をしている。
 ああ、あの人剣道やってたんだっけ。
 また、こんなとこでも差が……。
「おそまつさまでした。お茶を差し上げるまで、あちらでおくつろぎくださいませ」
 小夜子の挨拶で、懐石の方がやっと終わると、座敷を出て皆がまたリビングに移動する。
 どんより重い気分を抱えた良太に、「足がしびれたか」なんて工藤が声をかける。
 人の気も知らないで。
「平気です」
 つい、そっけない答えを返した良太は、傍らの涼に話を振る。
「涼って、ずっと、ハーバードなんだ? すげぇな」
「すごくなんかないよ。それより、俺はクリエイティブな仕事をしている人って尊敬するな」
 すっかりタメ口で意気投合している二人を傍で見やり、工藤は苦笑する。
 ガキはガキ同士の方が話が合うらしい。
 良太がタレントの仕事をやるのを、俺が許さないと思って、良太は懸命にその気がないのだとアピールしている。
 俺にもそう断言はしたが…
 アスカのいうように、別にこの仕事しかできない、というわけではない。望まれて、本人もやる気があるならタレントの仕事をしてはならない理由はないのだ。
 俺の顔色を窺う必要などどこにもない。ただ俺が面白くないだけの話だ。フン、あいつを育ててやらなくてはならないのに、俺が足を引っ張っていてどうする。
 工藤は自分の狭量さに苛立つ。


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