清風 27

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 帰りの車内は妙に静まり返っていた。良太がほとんど口を開かないからだ。
「メシ、食いに行くか」
 覇気のない良太の横顔を見やり、工藤はなるべくやんわりと言葉を選ぶ。
 首都高から見える街は既に灯りが渦を巻き、対向車のヘッドライトに良太は目を眇める。
「いえ、俺、今日はもう腹いっぱいなんで」
 良太はきっぱり口にする。
「懐石なんか、食ったうちに入らないだろう」
「今日は、帰ります」
「慣れないことをしたんで、疲れたか。まあ、たまにはいいだろう。ああ、明日の松山電気とのゴルフは流れたし、小笠原の方は俺が行くからいいぞ」
 翌日、良太はイベントに出演する小笠原に同行することになっていた。
 ただでさえタレントの世話など疲れるものだ。しかも小笠原はなかなかしたたかそうな男だ。千雪に言われるまでもなく、良太に押しつけるわけには行くまい。
「え、でも……」
 工藤だって疲れているのに、と良太は思う。
「明日はゆっくり休め。俺もやつがどんな仕事をするのか、自分で見ておきたい」
「わかりました…」
 そんなに俺って信用ないんだ。
 今の良太には工藤の配慮も言葉そのままに受け取ることができない。
 ふてくされた返事が工藤も気にかかる。
 また沈黙のまま車は会社の裏口に到着する。
「……お疲れ様でした。今日はありがとうございました」
 らしくもなくよそよそしい良太の態度に、工藤は眉を顰めた。


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