清風 28

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 シートベルトをはずし、車から降りようとした良太の肩を、工藤の手が掴む。
「何か気に触ることがあるのなら、言えばいい。いつもならブツブツ文句を言うくせに、むすっとしているだけじゃ、わからないだろうが」
「文句なんか…」
 いきなり工藤に詰め寄られて、良太は唇を噛む。
 そんなの、俺が言ったって、どうかなるってのかよ。
 人の気持ちなんて、はい、そうですか、って変わるもんじゃないだろう。
「いいか、前にも言ったが、ドラマだろうが、なんだろうが、お前がやりたければやればいい。それならそれで、俺はお前をいくらでも後押しする」
「そんなこと、考えてません!」
 見当違いの工藤に、良太は声を上げる。
「俺はとにかく、今の仕事をもっとやっていきたい、それだけです。失礼します!」
 工藤の手を振り切って、車から飛び出していった。
「くそ、いったい、何だって言うんだ!」
 煮え切らない。何か口元まで出掛かっているくせに、疑わしげな目を向けやがって、あのヤロー!。
 しばし車をそこに車を停めたまま、工藤は煙草を一本くわえた。
 まあいい、今日のところはゆっくり休ませてやるか。
 苦々しげに火のついてない煙草を噛んでいたが、やがてエンジンをかけると、高輪へとハンドルをきった。
 


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