清風 29

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 携帯が鳴っているのに気づいて、良太は目が覚めた。
 帰ってきてからナータンにご飯をやり、自分は缶ビールを飲みながらテレビを見ていてそのままうとうとしていたらしい。
 携帯を手に取ったときには、もう切れていた。
「涼?」
 着信履歴を見ると、涼、と出ている。
 心そぞろで出てきたので、携帯の番号を交換した涼にも今度飲みに行こうと誘われたが、曖昧に頷いただけだ。
 ちょっと今はかけなおす気にはならない。
「シャワー浴びて、寝ちまお…」
 ベッドに放り出しただけの上着や、首にまだ引っかかっていたタイを取ってハンガーにかけ、良太はバスルームに向かった。
 
 
 
「出ないよ…困ったな」
 良太の携帯を鳴らしていた当の綾小路涼は、ため息交じりに呟いた。
 綾小路家の広い居間では、涼の他に絨毯の上に寝そべっているロージィ、それに客がいた時はどこかに隠れていたアメリカンショートヘアのマイケルがソファで毛づくろいをしているだけだ。
 京助や千雪もたった今帰ったところだ。
 三人で少しばかり酒を飲んでいたのだが、帰り支度を始めた千雪が誰に言うでもなく、ぼそりと口にしたことが問題だった。
「やっぱ、俺、今日けぇへん方がよかったかな~」
「え、何で?」
 涼が聞き返すと、
「良太にようけ睨まれてた気がするし…」
 と言う。
「あのガキ、生意気に。お前より俺だろ、睨んでたのは。ほっとけ、ほっとけ」


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