清風 33

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 だが、相変わらず怒りを隠そうともしない工藤にはとりつく島もない。
 良太はあきらめて、窓の外に目を凝らす。通り過ぎる夜の風景はやがて木立の連なりとなり、車の走る音だけが二人の空間を埋めていた。
 何時間もパソコンを睨んでいたせいか、ちょっとうとうとした良太は、冷えてきた空気に目を覚ました。ジャケットを羽織ってきてよかったようだ。
 すっ飛ばしてきた車は、いつの間にか、雪に埋もれた山荘の前に停まった。
「あの、いきなりどうしたんですか? こんなとこ…」
 つい口調もきつくなる。
 工藤は返事もせず、さっさと車を降りて、玄関に向かう。わけがわからず良太も後に続く。
 工藤の曽祖父の持ち物だったというその山荘は、灯りのついた玄関から現れた平造老人が住み込んで管理している。
 一人で寂しくないか、と良太は聞いたことがあるが、案外、地元の人との交流もあるらしく、元来世話好きな老人は何かと重宝されているようだ。
「メシは部屋の方に用意してありますから。足りなければ、キッチンにパンとチーズくらいは。明日の朝食はどうなさいます?」
「適当に頼む」
 工藤はそう言うと、階段を上っていく。
「あ…どうも、こんばんは、平造さん。お邪魔します」
 何が何だかわからないといった態の良太はとりあえず、平造に挨拶する。会釈だけ返した平造は玄関に鍵をかけると、自分の部屋へと戻っていく。
 納得がいかないまま、良太は工藤の後から二階の部屋へついていく。


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