清風 41

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「夕べどこいってたんだよ!」
 朝からオフィスで工藤を待ち構えていた小笠原が、鈴木さんの出したコーヒーに手もつけず、工藤に文句を並べ立てている。
 やっと昼を過ぎてから現れ、大テーブルのソファにどっかと腰を下ろした工藤は、新聞を広げ、コーヒーをすすりながら、そんなものを聞いちゃいない。
「ああ、そうだな、早く、いいマネージャーが見つかるといいんだが、あいにく、なかなか決まらないんだ。まあ、気長に待てよ」
「俺はそういうことをいってるんじゃなくて!」
 小笠原も移籍してきたばかりで、多少、心配もあるのだろうが、基本的に豪胆で、瑣末なことに気を取られて仕事をおろそかにするようなことはない男だ。
 それを見て取ってのことだったが、そうでなくても、昨夜は仕事なんかクソ食らえ、という気分だった。
 良太も今日はほとんど仕事にならないだろう。
「さて、じゃあ、行くか」
 工藤は新聞を置いて立ち上がる。
 小笠原を引き受けると言ったからには、これ以上、放っておくわけにもいかないだろう。
「行ってらっしゃい」
 パソコンの前から、良太は声をかける。
「ああ、良太、疲れてるだろうから、今日は早々に上がっていいからな」
 バタン、とドアが閉まると同時に、良太の顔は真っ赤になる。
 夕べは良太と一緒に接待だった、と工藤は小笠原に空々しい嘘をついた。
 勿論、二人だけしか知らないはずのことだから、とは思うものの、会社に帰ってきてから一旦自分の部屋に上がった良太は、ナータンのトイレがきれいに掃除され、しかもちゃんとご飯や水がきちんと置いてあることが不思議だった。


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