清風 5

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 その小杉が帰ってくるまでは、良太がやらざるを得ないだろう。
 小笠原本人とはまだ一度顔を合せただけだが、この自信家の人気俳優とうまくやっていけるかどうか、少し心配ではある。
 どうも、一悶着ありそうな気がするんだよな。
「自分の仕事を優先しろ。無理な仕事を増やして、倒れたんじゃ、もともこもないからな。ああ、企画書は今日中だ。今夜は打ち合わせのあと飲みに行くが、何時になるかわからないから、タクシーで帰る。ああ、日曜、スケジュール、空けとけよ」
 工藤はそれだけ言うと、ブリーフケースと上着を掴んでオフィスを出て行った。
「ちぇ、結局、俺の都合なんか無視なんだから」
 ゆってること、矛盾してるじゃんよ。
 そうは思いながらも、良太の都合はけなげにも、いつでも忙しい工藤に合せられるように未定にしてあるのだが。
「あら、ステキじゃない、あの東洋グループの会長さんの家なんて、なかなか行けるもんじゃないわよ。行ってみたら?」
 良太がボソッと口にしたのが、こちらもさっきからパソコンで経費の計算をしていた鈴木さんに聞こえたらしい。
「それに、綾小路小夜子さんて、とってもきれいな方よ。前に雑誌のセレブ紹介って記事で見たことがあるわ。ただの若奥様ってだけじゃなくて、ご実家の呉服会社の重役もなさってるんですって。すごいわねぇ」
「はあ、そんなすごい人なのか…」
 あの小林千雪の従姉だというのだから、きっとすごい美人なんだろう。
 会社の重役やってるなんて。
 良太はバリバリのキャリアウーマンを想像して、ふうとため息をつく。
 だが、時間が経つにつれて心の片隅にあったもやもやがはっきりしてくる。


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