清風 8

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 そういえば世田谷が舞台のドラマだった。ちょっと考えれば山下町なんかではないとわかるはずだ。例え、例のドラマ撮影のことを根にもって、大澤流が良太に意地悪したのだとしてもだ。
 あんのやろう! ああ、どうせ俺はバカですよ、まぐれですよ、俺だって何であの大学出てこられたのかわかんねーんだから。
 ここのところ、工藤に対して良太の株は下がりっぱなしで、ついつい良太のため息も多くなろうというものだ。
 ぽっと出の『和泉秀也』に対する世間の評判がどうあろうと、工藤の仕事を踏襲していこうと思っている良太にとってはそっちの方が重大事なのである。
 だって、ここんとこな~
 工藤が忙しいのは毎度のことながら、ここ三週間ほどちっとも恋人らしいことをしていない、のである。
 経理の鈴木さんは別としても、良太やタレント、それに工藤は世間一般のようにカレンダー上の休日が休みとは限らない。
 ただでさえ仕事の鬼のような工藤と、『マジおバカちゃん』呼ばわりされたへっぽこ秘書良太の間には当分いちゃいちゃもへったくれもなさそうだ。
 つきあい始めた頃(というか工藤が強引に良太とできちゃった頃)などは、忙しい合間をぬって、仕事中に工藤が極めて不埒な行為を仕掛けてきたことも二回や三回ではない。
 なのに愛情がプラスされたはずの今現在、そのそっけなさときたら。
 釣った魚にえさはやらない、ってのを地でいく男だということは、下柳にもさんざ聞かされている。もっとも、工藤の場合、こっちが釣ろうとしなくても女は寄ってくるのだから、良太としては心穏やかではない。
 室井のように知っていてあからさまに工藤に言い寄ってくる女もいる。


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