花の宴 12

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 パイを切ろうとしているアスカが握るナイフのおぼつかなさに、「あ、ええ、俺がやるから」と千雪はそのナイフを取り上げる。
「あ、俺やります、千雪さん」
「良太、お皿並べてんか」
「でも、テーブル乗っかりませんよ」
「じゃ、あたしみんなに配る」
 皿を持つアスカを見かねて、今度は京助が切り分けたパイを二つずつのせた皿を取り上げて、配って歩く。
 そのようすをしげしげと眺めていたひとみが、「どういうことよ」と工藤に言う。
「どういうも、そういうことだ」
「俺も聞きてーな」
 知らない間に後ろにやってきた下柳が言った。
「何で、今まで隠してたんだ? あれが何で小林千雪だ? 以前俺が会ったのは、確かだっせーおっさんだったぞ。あん時の先生は偽者か?」
「別に俺が隠してたわけじゃない」
 苦々しく工藤は言い捨てる。
 何でこういうことになるんだ、と言いたいのは工藤の方だった。
 沢村には挑戦的な視線を送られる、小笠原はガンを飛ばす、京助に至っては当然のように敵意むき出しだ、加えてひとみは、何やら言いたそうな顔で睨みつける。
 やっぱり花見なんか、顔を出すんじゃなかった、というのが、いささか後ろ向きな工藤の内心なのだ。
「まさか、本当に昔話にセンチメンタルしてるとは思わなかったわ、高広」


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