花の宴 3

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「良太、遅くなってもいいから、工藤さんも連れてきてよね」
 というのがアスカからのお達しなのだ。
「おい、良太、たまには俺も休みたいんだ」
「会社のお花見に社長が顔出さないでどうすんです」
「上司を労わろうって気がないのか」
「どっかの宴会に行くんじゃないんだし、社内の人間だけなんだからいいじゃないですか」
 むっとした顔で腕組みをしている工藤がバックミラーに写る。
 いつでも立ち去れるようなスタンディングのパーティならまだいいが、実は工藤は宴会が嫌いなのだ。
 親しい間ならまだしも、仕事なら極力避けたい。
 花見の宴なんぞ金輪際嫌だと、取引先からのお誘いは今回もいろいろあったが、良太に、酒や弁当を差し入れておけ、とこうだ。
 基本的に工藤は人と群れるより一人で動く。
 それは子供のときからの習性のようなもので、今更変えられるものでもない。
 さらに、工藤の中には桜にまつわる古い記憶がこの時期心の奥底に見え隠れすることがあった。
「アスカさん張り切ってたから、野外パーティみたいになるんじゃないですか?」
「右後ろにマンションあっただろうが。騒ぐとこじゃないんだぞ」
「工藤さん、言ってくださいよ」
 間もなく車は乃木坂に着いた。
 駐車場に車を置いて玄関フロアに立つと、裏の方から案の定声が聞こえる。
「うわ、きれいじゃん!」
 裏庭へのドアを開けた良太は、不承不承ついてきた工藤を手招きする。
「あ、お帰りなさーい」
 アスカや奈々、鈴木さんに秋山、俊一、谷川という面々がライトアップされた桜の下で酒盛りを始めていた。
「すげぇ、ちゃんとライトアップしてる」
「まかせろよ」
 俊一がえらそうに言う。


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