花の宴 7

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「何だとは何よぉ、こんな楽しいこと、自分だけでやろうなんて。あら、良太ちゃん、久しぶりぃ」
 妖艶な笑顔で下柳の後ろから現れたのは、押しも押されもせぬ大女優だ。
「ひとみさん……どうも……」
 何つうメンツだ、と良太が心の中でため息をついたのがわかったように、ひとみのマネージャーの須永が、「すみません、押しかけちゃって」と申し訳なさそうに頭を下げる。
「昼にたまたま事務所寄ったら、今夜花見やるってからなぁ」
 下柳が嬉しそうに鈴木さんから日本酒を注いでもらう。
「きれいじゃないか、うん、さすが、平さんの桜だ、見事なもんだ」
「やーね、ヤギちゃん、ジジムサイ~」
 歯に衣着せぬもの言いでひとみが笑う。
「あ、差し入れね、コルトン・シャルルマーニュとシャンベルタン、それから赤のスプマンテ、美味しいのよ」
「わ、ありがとー、ひとみさん、さっそく開けよ」
「何もこんな猫の額みたいなとこにこなくても、桜見たけりゃ上野でも千鳥ヶ淵でも行けよ」
 アスカが喜んでボトルを受け取るのを横目に、工藤がボソッと口にする。
「相変わらず不景気な顔してるわね、高広。桜は楽しく見るのがいいのよ」
「飲む、の間違いだろ」
「当たり前でしょ、飲むんだって、楽しい方がいいに決まってるじゃない。それより、珍しいじゃない、桜、好きじゃないんじゃなかった?」
 微妙な言い回しで、ひとみが言った。
 ストレートの黒髪が肩に流れ、胸元の大きくあいた黒のドレスに長いストールをさりげなく羽織っている。
「余計なお世話だ、お前ら仕事はいいのか、仕事は」
「ヤギちゃんにお花見やるってきいたから、早めに切り上げてもらったのよ」
 簡単そうに言うひとみに、工藤は周囲のスタッフの苦労が目に浮かぶ。


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