「沢村っちから、良太くん、お花見やるから来いっていってるって。あ、これ、私たちから差し入れです」
「あら、ありがとう、わ、おいしそう」
そそくさとアスカが受け取った袋には、チーズやハム、ワインのボトルが入っている。
「おい、良太、いいのか?」
よそいきの笑顔を振りまいているかおりの横で、肇は怪訝そうな顔で良太を見た。
「あ、ああ、あの、俺の高校ン時の同級生で、水野かおりと飯島肇です」
良太が二人を紹介する。
「おい、俺は?」
沢村が要求するので、「沢村です」と仕方なく付け加える。
「美人なら、大歓迎、どうぞどうぞ」
調子のいい小笠原がかおりを手招きする。
「さっきの、アスカさんだったんだ? 携帯」
沢村も妙にテンションが高い。
「二人は同級生で、どうして沢村がいるわけ?」
アスカが思ったままを口にする。
「いや、俺って良太からするとライバルだったらしくて」
「何よ、そのライバルだったらしいって」
「うっせーぞ、沢村、三振とったことだってあるんだからな!」
聞きつけて良太が割り込む。
「そ、俺たち四人、『桜野球少年会』」
「勝手につけてんなって」
「何せ、リトルリーグからのつきあいだから」
アスカに沢村が説明するのを良太が訂正する横で、小笠原と俊一がかおりや肇に良太のことを聞きだしていた。