誰にもやらない4

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 関越を降りた辺りから吹雪になり、会社が所有する上越のリゾートマンションに一行がようやく辿り着いた頃にはもう十時を回っていた。
「女の子は窓の大きい方の部屋やね、ヤローはそっちの八畳間」
 マンションに着いて一旦リビングに落ち着くと、すかさず大沢が部屋割りを言い渡した。
 苗場スキー場まで徒歩数分、遊び好きな社長の春日が奮発して買ったという3LDKである。
 とにかくロケーションがいい。
「すげぇ雪だな」
「奈美ちゃん、スノボ、やるぅ?」
「やるやる!」
「コースケちゃんもやるよね?」
「だから、俺、スキーしか持ってないし…」
「どのくらいすべれるんだ? コースケ」
 さっそく女の子にかまわれている浩輔を見て、佐々木が背後から首を突っ込む。
「えー、ほっとんど、俺、初心者で」
「ほう、じゃあ、鍛え甲斐があるな」
「えっ、冗談やめてくださいよぉ」
 長旅の疲れもどこへやら。
 遊びの前のワクワクムードで、みんなではしゃいでいるうちに、夜は更けていった。
 

?

 翌日は昨夜の吹雪がウソのような快晴、最高のスキー日和になった。
 仕事には遅刻が多くて上司から常に文句を言われている大沢に叩き起こされ、みんなは朝食もそこそこに、午前九時にはゲレンデに向かう。
「ほな、昼、十二時に、そこのカフェテリアの前に集合ってことで、解散!」
 佐々木、土橋、それに浩輔と美紀がスキー、大沢、直子、保奈美の三人がスノーボードと、二組に別れ、各々ゲレンデに繰り出した。
「コースケ、俺がコーチしてやる、ついてこい!」
 リフトに乗り込んだ途端、佐々木がのたまった。
「えー、俺、初心者コースじゃなきゃ無理ですぅ!」
 どうやら、教えて、と騒いでいた女の子はスノーボードを選んでしまったようで、佐々木は張り合いがないらしい。
「男が弱音吐くなよ! 足の一本や二本折ったって、俺がおぶってやるから安心しろ」
「げー、そんなあああ」
 リフトはやがて終点でガッタンと止まる。
「行くぞ、コースケ!」
 シュワッッ、と軽やかな音を残し、佐々木の姿は眼前から消えた。
 土橋と美紀は、浩輔を佐々木に任せて、とっくに別のコースに行ってしまった。
「えええーっ! ちょ、前、見えないっすよ!」
 ほ…ほっとんど垂直じゃんかよぉ!
 佐々木はスイスイと滑り降りて行く。
 浩輔は恐る恐る崖っ淵にスキーを滑らせた。
「そう、腰落として、もっとブーツにぐっと膝押しつける!」
 佐々木に言われる通り、浩輔はこわごわ小刻みに斜めにゆっくりと滑り下りる。
 佐々木が遥か下でストックを振っている。
「佐々木さーん、置いてかないでー」
 慌てて態勢を立て直し、いざ滑ろうとしたその時、ズザザッッ…と、浩輔のスキーすれすれに、風のごとく駆け抜けた影。
「うわっ…!」
 もう少しで倒れそうになるのをストックで支え、前方に顔を向けると、黒のスキースーツに身を包んだ男が振り返った。


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