みんな、はっぴぃ!24

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  ACT 6
 
 
 エレヴェーターを降りると、エントランスの外に黒のフェラーリが停まっていた。
「どうぞ」
 小林は後部座席へ先に乗り、良太をナビシートに促す。
「すみません、よろしくお願いします」
 良太はなるべく運転席の京助と目を合わせないようにと、車に乗り込んだ。
「こっちが死体やら内臓やらと格闘してる時に、楽しそうなこって」
 京助は皮肉りながら、車を発車させた。
「そら、可哀相にな。来年は仲間に入れてもろたらええやん」
「するか、んなもん。大体、その藤堂ってな、何者だ?」
「『青山プロダクション』の仕事関係らしい。『PLUG‐IN』いう広告代理店の人やねんけど」
「らしいって、よく知りもしねーで行ったのか?」
「良太とかアスカさんもいてたし」
「アスカだと? 性懲りもなくお前をつけまわしやがって」
「アホいいな。あんなとこで会うとは思わんかったわ」
 二人の会話を聞いていた良太は、呆れて運転席の京助をチラリと見やる。
 こいつ、すんげーヤキモチ焼き。
 まあ、相手が小林では無理もないとは思う。
「けどほんま気前よう、プレゼント配ってはるなぁ。お金の心配はせんでもええみたいやったけど」
「なんか、子供の頃から、お母さんと一緒に施設とか回ってたみたいで、それが楽しかったって。藤堂さんのおかあさんって、熱心なクリスチャンらしくて、実家はいつもあんな感じだって」
 良太が答える。
「ほなまあ、ありがたくもろておくけど、良太は何もろたん?」
「俺、あのジルってフランス人からカード入れとキーケースで、藤堂さんにはスニーカーもらいました。ナイキの。俺、前にスニーカーもボロになったなんて言ったから。藤堂さん、それぞれに合わせて配ってるみたいですよ」
「サンタになりてーんだな、その藤堂って」
 京助が茶々を入れる。
「藤堂さん、いい人ですよ。ちょっと見、なに考えてるかわからなくて胡散臭そうだけど」
「そうやなー、ええ人や思うけど、ええ人ってだけで、学生居候させたり、絵、買うたりせえへんよなー。あのリビングの大きい絵、藤堂さん買うたんやろ?」
「はあ、そう、ですね」
 藤堂と悠がどういう関係なのかとか、良太には面と向って聞くことはできなかった。
 将来有望なアーティストに手を差し伸べるために一緒にいるのだろうか。
 そういうのでもないような気がするなぁ。
 良太はひとり、思案にくれた。
 
 
 
 
 静けさを取り戻したリビングでは、クリスマスの飾りたちだけが楽しげに輝いている。
 人の波が一気に引いてしまうと、妙な寂寥感が残る。
 大テーブルもきれいに片付き、何事もなかったかのようだ。
 食器類も棚にきちんと並べられている。
 食器類やキッチン用具は前の部屋からも何とか持ってこられたし、今夜は充分それが役に立った。
 藤堂はソファに腰をおろし、悠とアイちゃんの帰りを待っていた。
「もし、悠ちゃんがここから出て行ったら、かなり寂しいだろうな」
 今までにつきあった相手の中にも、藤堂のとっぴな発想についていけないというコもいた。
 確かに、藤堂は常人とは違うところもあることはあるのだが。
「達也に比べたら、俺なんかてんで普通だ」
 河崎と比べても何にもならない、ということは、この際考えてはいない。
 振られたことは数知れずだが、一緒に暮らした相手は今までかつてない。
「悠ちゃんはもうここにいるのがいやなのかな」
 悠には新しい絵の具や筆をたくさんプレゼントした。
 悠が一番喜ぶと思ったからだ。
 例えどんなに喜んでくれたとしても、物では人の心は動かせない。
「無理強いしても意味はない」
 そう、去る者は追わず、あっさりとしたものだ。
 よもや、追いかけてきてくれるかも、などと相手が思っているかも、なんてことは藤堂はこれっぽっちも考えなかった。
 彼としては誰にでも、特に可愛いコには優しいし世話焼きでもある。
 それに嘘はないが、特定の相手ではないことが、彼を河崎とは別の意味で不実に見せていた、なんてことは、どうもわかっていないのだ。
 人のことはよく気づくのだが。
「ただいま」
 悠の声がして、アイちゃんが飛び込んできた。
「お帰り。寒かったろう? 何か飲むかい?」
 しきりと尻尾をふってご機嫌なアイちゃんを撫でながら、藤堂は悠に聞く。
「何でもいい」
「じゃあ、紅茶にしよう。ちょっとブランデーをたらすと暖まる」
 藤堂は湯沸しをガスレンジにかけ、ポットとティーカップを用意する。
 日付はもう二十五日になっていた。
 悠がジャケットやマフラーを自分の部屋に置いて出てくると、「そこに座って待ってなさい」と藤堂は言った。
「いい香りだ。さあ、どうぞ」
 藤堂はソーサーごと悠に紅茶の入ったカップを渡す。
「ども…」


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