「でも可愛いコにも実は目がないんだ」
藤堂はジロっと睨みつける悠の目を覗き込む。
「悠ちゃんみたいな、ね」
「う、やめろ! 寄るな!」
喚いている悠の唇をゆっくり塞ぐ。
なんだ、そうだったのか。
わかってみれば他愛ないことだ。
悠が小林くんを妬いてたなんて。
それなら、何の遠慮もいらないわけだ。
何度かキスを重ねると、やがて悠の体から力が抜けていく。
「いい子だ。じゃあ、ベッドで温まろう」
「いやだ」
まだぐずぐず言っている悠の手を引いて、藤堂は寝室に入る。
「さあ、脱いで脱いで」
藤堂の手はするりと悠のセーターを脱がせてしまう。
「あ、ばか、やめろって」
「ふ、わかったよ。そんなにいやならもうしない」
つと離れる藤堂の指。
「え……?」
途端に不安そうな悠の眼差しが藤堂を見上げる。
「なーんていうわけないだろ」
「ちくしょ、だましやがったな!」
ギャースカ言っていた悠の唇からあえかな吐息が漏れるようになればもう、藤堂のペースだ。
「あ……つい……!」
悠は藤堂の指に操られてからだをくねらす。
それを押さえつけるように藤堂は身体を重ね、焼けるような熱を共有する。
「だめ……も、たまんない……」
「悠…」
藤堂の声が悠のからだの芯から蕩かそうとする。
「行かないで…どこにも…」
いつも置いていかれた、皆に置いていかれた、そんな心の奥底にある空洞が時折、見えてしまう。
藤堂は漠然とそんな悠の不安を嗅ぎ取っている。
「悠……大丈夫だよ…どこにも行かないから」
「………ん……」
刹那、藤堂の手を捜してさまよう悠の指を藤堂はしっかりと握り締めた。
ホワイトクリスマスどころか、夜空は寒として晴れ渡り、煌々とした月が顔を見せている。
だが、どうやらサンタクロースは藤堂にもちゃんとプレゼントを届けてくれたようだ。
力尽きて、意識を手放した悠を抱きしめながら、藤堂はカーテンの隙間から見える月ににっこり微笑んだ。
「メリークリスマス!」
おわり