昨年は人気ロックグループ『イリュミネ』のメンバーや、女優の中川アスカやらも混じって華やかだったが、今年のパーティには今のところタレントやらアーティストやらは参加する予定はない。
その代わり、『ジャスト・エージェンシー』の池山直子が友達を連れてくることになっているし、悦子や高津、それに何と言っても悠という新しい顔ぶれもある。
どちらかというと、藤堂はファミリーで和やかな雰囲気のパーティにしたかったのだ。
「あ、そういや、さやかのやつ、来るとか言ってたか」
社用車である日産ティアナを運転しながら、藤堂はさもいやそうに口にする。
「そうですねー」
助手席の浩輔も、ああ、と頷く。
さやかとは色々過去からの因縁もあり、浩輔も少々苦手だ。
さやかの性格を把握してみると、昔ほど嫌ってはいないが、未だにさやかと『PLUG‐IN』の面々は腐れ縁という感じである。
「とっとと結婚でもしろ!」
藤堂は吐き捨てるように言う。
彼女も元英報堂の社員だったが、河崎や藤堂と前後して退社した。
商社の会社役員の娘で、麻布あたりにマンションを買ってもらい今でも何不自由なく暮らしている。
英語、フランス語、イタリア語をあやつる彼女はたまに著名人のパーティなどで通訳などをしているらしい。
「『青山プロダクション』で良太、拾っていくんでしたっけ」
「っとそうそう、良太ちゃん、忘れちゃいけない」
敏腕プロデューサー工藤高広を社長とする『青山プロダクション』は、中川アスカらタレントを数人抱える芸能プロダクションであると同時に、その共同プロジェクトのお陰で『PLUG‐IN』が大きくなったといっても過言ではない。
大事な得意先だ。
広瀬良太はその『青山プロダクション』の社長秘書兼プロデューサーの卵として徐々にその力をつけつつある。
乃木坂にある『青山プロダクション』のビルの前まできた時だ、会社のエントランスの前で、良太が黒いコートを着た男と話している。
「誰だろ。お、すげー美人。え、男?」
浩輔が車の窓からじっと目を凝らす。
「おや、あれは……」
藤堂はその人物に見覚えがあった。
すすーっと二人のそばに車を停める。
「急に予定がキャンセルになったよって、時間が空いたし挨拶に寄っただけやし。出かけるとこ、すまんかったな」
「いえ、せっかく寄ってくださったのに、すみません。多分、年末には社長、戻ってくると思うんですけど」
車を降りた藤堂は、そんな話をしている二人に歩み寄った。
「ホイ、良太ちゃん、お迎えにあがったよ。と、こちらは、以前、お会いしましたよね」