好きだから 184

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「家族も学校も野球部員もどいつもこいつも俺は嫌いだった。神戸のジジイとお前以外みんな」
 良太は沢村の顔を見た。
「誰かが好きだとか、そういうのってのはお前以外佐々木さんに会うまで金輪際なかった」
「あー、そこ、俺のことはすっ飛ばしてくれていいし」
「人を本気で好きってのは、なんか、その人に、佐々木さんに心ごと俺の何もかもを持っていかれるっつうか、もう身動き取れないっつうか」
 沢村はそう言うと一つ大きく息をついた。
 あの人も俺のことを好きだった、絶対に。
 けど……、やっぱあの男と………。
「野球やってる俺が重いんだと。だったらいくらでも野球なんか捨ててやるのに」
「…………お前、ちょっとそれは、違うんじゃないか?」
「何がだよ?!」
 良太は一呼吸おいてから口を開いた。
「アスカさんが………うっかりお前とオヤジさんの件、口にした時、佐々木さんが聞いてしまったんじゃないかって、自分のせいでお前と佐々木さんがどうかなったらどうしようって悩んでて」
 沢村は良太を見た。
「……いや………それは………いずれは俺が話さなけりゃならなかったことで……。アスカさんとか巻き込んで悪かったよ。まあ、俺が姑息にも佐々木さんに隠そうとかしたことが余計に佐々木さんにはうざったかったのさ」
 自嘲気味な言葉ばかりが口をついて出る。
「佐々木さんのお母さんが足怪我したって……俺には何にもできなかった。それに……幼馴染の医者とかって男が……いた」
「そいつと佐々木さん付き合うって?」
 直子が言っていた男だと、良太は察しがついた。
 沢村と顔を合わせていたとは。
「そうじゃねえの? ほんと言って……………ここまで頭も心もボロボロとか、わけわからねーし。ハハ……」

 


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