好きだから 185

back  next  top  Novels


「お前それで、佐々木さんには連絡取ってないのか?」
「できるわけないだろ、お前、重くてウザいやつにつきまとわれたいと思うか? 佐々木さんを苦しめるってわかってて、んなことできねぇよ!」
 沢村は強い口調で言い放った。
「そんで諦めんの? 諦められんの?」
「諦められりゃ、こんなグダグダしてるかよ!」
 沢村はまた声を上げた。
 ふう、と今度は良太が息をつく。
 重い、か。
 強い言葉。
言葉の呪縛。
 そういうのって、段々デカくなって、杭みたいになったやつを自分の心に突き刺しちまうんだ。
「俺はさ、幸せな家庭に育ったんだなって、秋山さんに言われた。確かにガキの頃は、貧乏だけど、オヤジとかあさんと亜弓がいて、野球やって、学校卒業したらオヤジの工場一緒にやってけばいいなんて、ほんと、甘いこと考えてたな。だから大学入っても卒業さえできればいいくらいで野球やって、就活もろくにしてなくて、そしたらある日突然、うちも工場も取られて親と亜弓は夜逃げみたく町を出て、俺のアパートにはヤバい債権者がやってきて、どっかで見たドラマみたいなことになって、大学の募集の張り紙見て今の会社で工藤に会った」
 途端、良太の脳裏に工藤の顔が浮かぶが、すぐに昼頃佳乃と二人出かけて行ったことまで思い出させて、良太は顔をしかめた。
 それに工藤と自分は恋人とか付き合っているとかいえるものではないのだ。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ