好きだから 189

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 良太と沢村たちとの忘年会のことは直子経由で聞いていた。
 だから、佐々木にうっかり知られてしまったかもしれないと謝罪を沢村に伝えてほしいと良太が行く前に頼むつもりだったのだが、良太は仕事で出かけていて、しかも、工藤は佳乃が来て一緒に出掛けて行ったという。
 え、まさか、良太と工藤さんまでぎくしゃくとか、ってのじゃないわよね。
 自分の言動が佐々木と沢村の間に亀裂を作ってしまったのではないかという危惧がアスカの中にずっとあった。
 直子とも電話で話したのだが、佐々木はここのところいつも通りに見えるように、無理をしているのがわかる程で、直子は「このままだと、絶対いつか佐々木ちゃん、壊れてしまう気がする」とアスカに訴えた。
 それを聞くと、さらにアスカの罪悪感が増して、いてもたってもいられずに、いつもなら午前中オフと言われれば寝てるだろう朝十時にも拘わらず、こうやってオフィスに出向いたのだ。
 頬杖をついてぼんやり窓の外に目を向けていたアスカは一台の車が会社の前に横付けされるのを見た。
「ベンツ? シルバー? 確か工藤さんのはもっと渋いグレーだったよね」
 知らず口にしていたアスカは、助手席から降りたのが良太だと気づいた。
 車の後ろから回って会社のエントランスに向かっていた良太を、運転席のパワーウインドウが開いて、声をかけた男がその腕を掴んだ。
「え、何? 沢村?」
 しばし二人は言葉をかわすと、良太は車を離れ、シルバーのベンツはスーッと走り去った。
「どういうこと?」
 アスカは思わず立ち上がった。
「どうかしましたか? アスカさん」
 するとオフィスのドアが開いて、「おはようございます」と良太が入ってきた。

 


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