好きだから 19

back  next  top  Novels


 ACT 3

 十月末日、都内某老舗ホテルのロビーラウンジはいつもより賑わいがあった。
 夜のロケーションが評判のカフェバーではハロウィンにちなんだ特別メニューやスイーツを味わえるとあって、女性客やカップルがきりもなく訪れていた。
 しかもハロウィンとあって、ただ着飾っているだけでなく、奇抜なファッションで現れる客も少なくない。
 そんな中、黒の大胆にスリットが入ったロングドレス、黒のヒール、黒のリップというコスチュームに身を包んだ美女が大柄の男と腕を絡めてエントランスから上がってきたエレベーターを降り立った。
 栗色の豊かな髪はふわりとアップにして、シャープなメイクははっきりしたヨーロッパ系の顔立ちによく似あっている。
美女が男を見上げて囁きながら笑った。
「ねえ、あれ、中川アスカじゃない?」
「うわ、何、彼氏? 誰、誰?」
 ロビーラウンジでお茶を飲んでいた女性客が彼女に気づいて傍らの友人に声をかけた。
 やがてラウンジの他の客も中川アスカに目をやった。
 すると彼女たちの声が届いたかのように、男がサングラスを取った。
「うっそ、あれ、沢村じゃない?」
「え、誰? めちゃカッコよくない?」
「関西タイガースの沢村よ、知らないの?」
 あちこちで二人を認めてひそひそ話し合っている。
「うお、沢村じゃん」
「ウソ! 沢村ってこないだ、どっかの令嬢と結婚とか言ってなかった? あたしもう、超、悔しくて!」
「バーカ、沢村がお前なんか相手にするかよって」
「ひっど、何よ、それぇ」


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ