好きだから 65

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 やから、面倒なことになったらと思うたんや。
 選んだ日本酒が口当たりがよくて、佐々木はサーモンのカルパッチョをつつきながら何度目かのお代わりをした。
「しかし、お前が何で離婚? ひょっとしてオフクロさんと嫁の折り合いが悪かったか」
「いや……彼女、俺といると絵、描けへんて、ほんで出て行ってしもた。もう、ずっと前の話や」
「うーん、芸術家とか、よくわからんが、そんで、次はよ? ほんとにオフィスの可愛い彼女とは何でもないわけ?」
「お互い、仲良すぎて兄妹みたいなもんやから。ほんまにようやってくれるし、直ちゃんがおらなんだら、俺、仕事もやっていかれへんけど」
「ふーん、だったら、今、フリーってやつ?」
 聞かれて佐々木は一瞬躊躇した。
「………せや……な。オカンは毎朝、俺にええご縁がありますようにとか仏壇に手ぇ合わせよるけど、こればっかはどうにもならん」
「なんか、今、間があったな? まさか、お前、一応フリーとは言ったものの、実は人様に言えないような相手がいるとかじゃねぇよな? 不倫とか?」
 稔は妙なところで勘がいい。
 不倫は当てはまらないにしても。
「不倫とか嫌いやから」
「ふーん、まあ、いい。で? 仕事は順調なんだろ?」
「何とか。けど俺はのんびりやりたいのに、ここんとこ忙しすぎて。その上、オカンがあれやろ。参ったわ。でも稔さんのお陰で助かった。おおきに」
「何、水臭いこと言ってやがる。俺とお前の仲でよ」
 ガハハと笑う稔はワインを飲み干してしまい、また生ハムやチーズ、それに合うという日本酒を追加オーダーした。
「ガキ大将といや、お前の隣に住んでたガキ大将はどうしてるよ?」

 


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