好きだから 66

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「隣? って、もしや京助さんのこと?」
「そうよ、あのデカいうちの裏門がたまたま開いてて、庭に俺がちょっと入り込んだら、あの野郎、不法侵入だとか何とかいいやがって、喧嘩になってよ、五年生ン時か?」
「ええ? そんなこと知らんで? それでどないなってんね、そん時」
 意外な話に佐々木も眉を顰める。
 淑子が聞いたら火を噴きそうな話だ。
「取っ組み合いになって、結局決着つかずに、兄貴がやってきて、喧嘩止めてくれてな。お茶とかケーキを出してくれて、ありゃ、できた兄貴だった、うん」
「何やね、それ。隣言うても学校もちごたし、あんまり行き来はなかったけど、最近、仕事でたまに会うで。兄貴の方は、あこの会社のえらいさんやし、京助さんは、大学の准教授」
「ほう?」
「まあ、京助さんは稔さんと同じやな」
「何が同じだ」
「ガキ大将は相変わらずやってこと」
「フン」
 佐々木が苦笑いすると、稔は面白くなさそうに、運ばれてきた冷酒を佐々木のグラスにも注ぐ。
「お、これも美味いな」
 それから稔が海外での話を面白おかしく語るのを聞きながら、佐々木は調子に乗って冷酒を飲んだ。
 もう一軒行くか、と店を出てから稔が言ったが、佐々木はちょっと飲み過ぎたことに気づき、やんわり断った。
「年かな、弱いわけやないのに」
 ゆっくり歩いても佐々木の家まで二十分はかからない。
 酔いを醒ましながら帰るからと歩き出した佐々木の足元がおぼつかないのをみて、稔は送ると言って隣で腕を支えた。

 

 


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