好きだから 76

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「興信所も仕事ですからね。ただし、今回のことでその興信所のヤツも足を踏み外しました。何より、アスカさんの部屋に盗聴器とか、いい加減工藤さんの逆鱗に触れましたから、もう手を引かざるを得ないようにすると思います」
 佐々木はそこまで聞くと、足を止めた。
 血の気が引くとはこのことを言うのだと、佐々木は他人事のように思った。
「沢村が父親に、俺のことを口を滑らせたいうことか?」
 いや、どうやら佐々木の名前は出していないようだが、しかもそのお陰で沢村は父親の命を受けた興信所に探りを入れられている、とそういうことらしいが、佐々木はすぐにはすべてを消化しきれなかった。
 アスカさんの部屋を盗聴?
工藤さんが逆鱗?
 アスカと沢村のスクープはどうやら二人がわざと撮らせるように仕掛けたもので、沢村は興信所につけ狙われているから佐々木に会おうとしていないのか。
 いや、問題はそんなことやない!
 ここまで周りを巻き込むことになろうとは夢にも思っていなかった。
 ハロウィンパーティもいきなりで、しかも部屋を取っていたとか、あれも藤堂さんらを巻き込んだことだったのだ。
 目を閉じた佐々木の頭の中を沢村の顔や声が通り過ぎた。
 ダメや! もう!
解放してやらないと。
こんな恋は滅却させないと。
このままではあいつがダメになる。
佐々木の思考はそれ以上働くのを拒否していた。
 とりあえず、携帯はオフィスにでも届けよう。
 佐々木はとぼとぼとまたエレベーターへと戻っていった。

 


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