恋ってウソだろ?!2

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 一体全体どうしてこんなことになったのか。
 混乱する頭がようやくまともになったのは、佐々木の住まいである自宅の離れに戻ってベッドに横たわってしばらくしてからだった。
 確かホテルのバーで会って、話したことは覚えている。
 内容がいまひとつ思い出せないのは、いつになく酔っていたからだ。
 佐々木周平、一月に誕生日が来ると三十三歳。
 なかなかに男らしげな名前からは想像がつかないほど眉目秀麗な容姿の持ち主であることは、彼が生業とするクリエイターとして身を置いている広告業界でも知られている。
 モデルや俳優を使ってCMや雑誌広告を創ったりする仕事の中で、下手をすると佐々木自身が誰よりその画像の中に納まるのが似合っていたりするわけで。
 特に冬など、ユニセクシュアルなセーターでも着て、バーか何かでグラスを傾けていたりすれば、どこのモデルかというように画面にはまる。
 ちょっと長めのウエーブがかった髪は自前、うるさそうにかき上げたりする仕草すら優雅で、しかもセクシーだ。
 だがしかし、いくら艶やかな姿にクラッときたからといって、ここで間違っても「お嬢さん、お一人ですか?」なんぞと声をかけたりしてはいけない。
「てめぇ、殴られたいか?」
 虫の居所が悪ければ、そんな台詞とともに睨みをきかされるはめになるのだ。
 だが、その夜の佐々木は少しばかり違っていた。
 年に一度あるかないかだが、いつも強気でポジティブな佐々木にも、弱い自分が表面に出てくる時がある。
 たまたまそれが夕べのことだった。
 そんな時は大概、彼のために会社をひとつ作ってしまうほど、その才能も佐々木自身をも大切に保護してきたジャスト・エージェンシー社長の春日が酒の相手をしていたりするので、いつの間にか過ぎていくのだ。
 しかし昨夜は珍しく佐々木はひとりで、あちこちでパックリ口を開けたかぼちゃどもが、まるで自分をあざ笑っているように思えて動く気力さえなくなり、かろうじてエレベーターで高層階にあがると、そのフロアにあるバーに入ってウイスキーを何杯か開けた。
 原因はわかっている。


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