好きなのに 1

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   ACT 1

 車が動き出しても、会話がなかった。
 助手席の佐々木は割りとすぐに目を閉じて眠ってしまったようだ。
 沢村は窓の方に顔を向けている佐々木をちょっと見やった。
 良太に改めて言われなくても、沢村もわかっているつもりだった。
 佐々木は沢村に迷惑をかけるようなことは絶対したくないのだと。
 佐々木のせいで沢村が今日のようなマネをしたことで、下手にマスコミに嗅ぎつかれるようなことはあってはならないのだと、そう思っている。
 だから、植山のことも俺に話さなかった。
 そして俺に対しても怒っているのだろう。
 わざわざマスコミにネタを提供するようなマネを何でしたんだと。
 わかっている。
 そんなことはわかっているさ! それでも……
 どうしても抑えることができなかった。
 良太が俺に教えなかったのは、そんな俺のことをよくわかっているからだ。
 そうだ、あいつだけはよく知っているだろう。
 俺が世間で言われているような、そんなクールな男じゃないってことを。
 マスコミに追われて、嫌気がさして、無視するようにしただけだ。
 何か言えばそれだけ騒ぐんだ、やつらは。
 沢村はまだ憤りが納まらなかった。
「佐々木さん」


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