好きなのに 10

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 沢村はポケットから東京行きの切符を出して佐々木に渡した。
 佐々木はとにかく沢村の後について東京行きの新幹線『あさま』に乗り込んだ。
 余計な時間をくわないようにと、沢村も考えたのだ。
 本当は昨夜ゆっくり過ごして、今日はスキーをする予定だったのだが、あの植山のお陰ですっかり狂わされた。
 グリーン車両の端の席だが、窓側を佐々木に用意したのに、「俺はこっち座る」と佐々木は沢村を窓側へ促した。
 下手に何か言うと、さらに佐々木の機嫌を悪くする気がして、沢村は素直に佐々木に従った。
 東京まで一時間とちょっと。
 羽田まで三十分ほどとして、搭乗までギリギリだろう。
 ほんとに。
 こいつときた日には!
 キャンプ中はもう絶対会うのなんかやめだ。
 そんなことを佐々木がつらつら考えているうちに、列車は埼玉県に入っていた。
「何か飲む?」
 車内販売のパーサーが通りかかったので、沢村は佐々木に聞いたが、「今はええ」とそっけなく返された。
 グリーン車両は通路を隔てた窓側の席に老人が座っているが、二人の後ろは空いていた。
 斜め後ろの席には年配のサラリーマンらしき男性が座っているが、目を閉じて眠っているようだ。
 沢村はそれを確認すると、佐々木の手を握る。
「……バ……」


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