好きなのに 100

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 一瞬、動きを拘束された佐々木だが、次には力一杯沢村を押し退ける。
「アホ! 何しよんのや!」
 だが、部屋へ上がろうと階段の方へ行きかけた佐々木は、力任せに腕を掴まれたまま逆に玄関から外へ連れ出された。
 一部始終を観客よろしく目の当たりにしたリビングの面々は、しばし呆気にとられて静まり返っていた。
「あららららら………、何て情熱的!」
 最初に我に返ってそう口にしたのは理香だった。
「てんでロマンチックとは程遠い合宿だと思ってたのに、ドラマチック!」
「ファンタスティック! 今時中学生でも健全すぎるぜってな、なかよし合宿が続いてていい加減退屈してたとこだ。終盤にきて、こんな手の込んだ演出を用意するとは、京助もやるじゃないか」
 半分茶化すように手を叩いたのは速水である。
「誰が用意するか」
 京助は怪訝な顔を速水に向けた。
「うっわ、ショック! 佐々木さんが、かっさらわれたぁ!」
 三田村や公一、研二と一緒に飲んでいた佐久間はすっかりできあがっていて、オーバーアクションで撃沈する。
「愛の逃避行ってやつ?? くそぉ! 負けてしもたぁ! 俺だってやなぁ!」
 三田村もわけのわからないことを口走っている。
 エットーレなどは佐々木を連れて行ってしまった沢村に対して、何やらイタリア語で文句を撒き散らしている。


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