好きなのに 11

back  next  top  Novels


 バカやろうと口にしそうになって、佐々木は慌てて口を閉ざし、手を引き抜こうとするが、沢村は離してくれない。
 どころか何か言おうとした佐々木の唇をすばやく奪う。
「……お前……ええ加減にせんと、次で降りるで」
 佐々木が小声で精一杯抗議しても、「次、東京」としれっと笑い、沢村は手も離してくれない。
 耳まで赤くなってくる。
 どころか、目一杯沢村に喰われた身体の奥ではまだ熱いものが燻っているのだ。
 沢村はそんな佐々木をからかうように、握っている手を愛撫する。
「……連れ去りたいのは俺の方だって、クソ!」
 沢村が呟いた。
 列車が東京駅に着くなり、佐々木は沢村の手を振りほどいて立ち上がる。
「つれないなぁ……」
「ほな、気ぃつけて」
 文句を言いながら、佐々木の後を追うように列車を降りた沢村に、佐々木は言った。
「え、羽田まで一緒に来てよ」
「お…前、ええ加減にせえ! ガキみたいに!」
 歩きながら耳元で囁く沢村に、佐々木は思わず声を上げる。
 雑踏の中、周りも聞こえはしないだろうが、佐々木ははっと自重する。
「来てくれなけりゃ、また、手つなぐぜ?」
 カッとなりつつも、仕方なく沢村の後について山手線に乗り換える。
 浜松町で降りると今度は羽田空港ビル行きのモノレールに乗る。


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ