好きなのに 120

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 だが言われてみれば佐々木も思いあたらないではない。
「良太のやつ、それこそ思い込んだら一直線だからな」
 午後三時半、車は首都高に入っていた。
「え、待てよ、羽田行くんじゃないのか?」
 向かっているのが都心だと気づき、佐々木が呟いた。
「冗談だろ? 夜の便だぜ。まだ充分時間がある」
「夜って何時や?」
「……19時」
 沢村はムスッとした顔で答える。
「充分てほどやないけど……銀座なんか来てどないすんね?」
 しかも車を停めた場所は、友香が個展をやっているギャラリーのすぐ近くである。
 運よく出て行く車があって、沢村は空いた路上パーキングに車を滑り込ませた。
「直ちゃんに聞いたんだ。俺もあんたのトモちゃんの絵見たいから」
 本当はどんな女なのか見たい、というのが沢村の本音なのだが。
「おい、ちょっと……」
 たったか階段を上がっていく沢村を佐々木は慌てて追いかける。
 何を考えてんのんや、あいつは!
「こんにちは、ちょっと見せていただきます」
 ドアを開けて沢村は声をかけた。
「あ、はい、どうぞ」
 友香の声が聞こえた。


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