好きなのに 124

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 そこへギャラリーの女性スタッフが戻ってきた。
「いらっしゃいませ」
 女性は二人を見ると、愛想よく声をかけ、受付の椅子に座った。
 沢村が徐にその女性に近いて何か話をしているのに佐々木は気づいた。
「ええ、もちろん、ありがとうございます」
 にこにこと愛想よく立ち上がったと思うと、女性スタッフが友香のところに来て言った。
「あちらのお客様があの絵をお買い求めくださいましたよ、よかったですね、森野さん」
「え……」
 驚いて立ち上がったのは友香だけではない。
「ちょっと、おい、どういうつもりや?」
 佐々木はつかつかと沢村に歩み寄り、問いただす。
「どういうも何も、佐々木さん、あの絵が好きだって言ったじゃないですか。箱根の別荘に飾ろうと思って」
「箱根の別荘に?」
「ベンシャーンの小品で終わってるでしょ? その向こうでいいですか。佐々木さんの目で、あの壁の絵、並べ替えて下さいよ、友香さんの絵も入れて」
 確かに、あの壁の作品は見ごたえがある。
 佐々木は箱根の別荘の様子を思い描いた。
 あの別荘自体空間が大きいし、廊下から全体を眺めるとどこかの美術館のようだ。


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